寝ている間も
こめかみから右に五センチ上に二ミリのところだよ、その記憶は。だからそこから一本針を通してね、反対に抜けるとキレイにその記憶だけ取れるんだ。
みたいなね、みたいな感じで"忘れる"ことが出来るなら、君もわたしも生きるのがもう少し楽だったよね。
忘れるって、失うことではないんだね。恥ずかしい出来事も、昔の自分も恋人も、叶わないのにまだ好きなあの人も、完全に記憶から消し去ることはできない。
できるとしたら、その記憶を少しずつ少しずつ小さくすることだけだ。
だけどそれも、思いもよらぬことでバチッと全部思い出したりして、すぐに鮮明になったりするから厄介だ。
完全に忘れることができるのは、何十年後か先、忘れたことも忘れてしまうようになったとき。
良い記憶もね。
忘れたいのに忘れられないって、人間だれしも悩むことなのに、それでも進化していかないのは、やっぱり必然性があるからなのか。
みんな日々、何かに悩んでいるのかな。
常に何かふとした時に考えてしまう、基準の思考元があったりして、一人でいるときはそこに戻ってきてしまう、みたいなことがあるのだろうか。
私は今二つほどそういう基準の思考元があって、事あるごとにそのことばかり考えてしまう。
何も考えていない時間って多分ないな。
どちらかというとネガティヴマシーンなので、それを考えていて楽しいってことはあまりないし、うわあああ!って叫びたくなることもあるけど、猿とかではないのでそこらへんは大人しいです。
忘れたいこと、忘れられたら楽なこと、いろいろとあるけど、全てを忘れてしまうのはもっと辛い。
忘れられないモヤモヤを物質化してできた芸術なんかもあるだろうし、人間がネガティヴな記憶を簡単に捨てることができたら、文化はここまで発展しなかったのかもね。失恋ソングなんて特に。
なんてことを書くつもりはさらさらなかったんだけど、なんとなく朝起きたら冒頭の文章が思い浮かんで、二度寝して起きたらそこだけメモってあったので続きを書いてみました。
いや、こめかみに針通したら痛いやん。